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意識が浮上した俺の中では、ずっと昨日の鬼の言葉が燻っていた。<br><br><br>『無為に命を散らすことを誇りとは言わない』<br><br><br>であれば、意義のある死とはなんだ。俺がしたことが間違いだと言うなら。自分がまだ未熟だからと、勝てぬからと、あの脅威を野放しにしていれば良かったのか。俺が強くなるのを、向こうは待ってくれないのに?<br><br><br>やり場のない怒りに、布団の端をぐしゃりと掴む。<br><br><br>「…………俺のしたことは、無駄だったのでしょうか」<br><br><br>俺の問いかけに鱗滝さんは、少し唸った後、首を振った。<br><br><br>「物事に意味があるかは、誰にも分からん。……………実際、あのとき鬼は、人里に下りることもできた。お前の判断も一つの正解だ。意義などというものは、畢竟、後世の人間が後付けで決定しているに過ぎない。正しい選択が初めから分かるなら、人は苦悩などせん」<br><br><br>違う。俺が聞きたいのはそんなことじゃない。しかし何がこんなに苛立たしいのか、自分でもよく分からなかった。<br><br><br>「……だが……そうだな。お前がもし昨日、死んでいれば、儂はお前を送り出したことを、一生悔やんだろうとは思う」<br><br><br>「………え?」<br><br><br>鱗滝さんの言葉に、俺は顔を跳ね上げた。<br>彼は俺に差し出した椀を置いてから、さも当たり前のように「そうだろう」と言った。<br><br><br>「お前が鬼を恨んでいると知って、あれを連れて来ると決めたのは儂だ。何かあれば、それは儂の判断違いに他ならない」<br><br><br>「そんな……!!悪いのは碌に話も聞かず飛び出した俺で……っ」<br><br><br>『――――実力に見合わぬことをして、責を負うのはあの鬼狩りだぞ』<br><br><br>「………っ」<br><br><br>つくづく、昨夜の鬼の言葉が思い出され、その正しさに唇を噛んだ。<br><br><br>「………俺が、俺が弱いばかりに、鱗滝さんにご迷惑を」<br><br><br>「錆兎それは…………いや……言い方が悪かったな」<br><br><br>鱗滝さんはそう言うと、俯く俺に向かって手を伸ばした。<br><br><br>「そうではない。仮に、お前があの場で鬼を倒せていたとしても、それで代わりにお前が死ねば、儂はそれを悔いていた」<br><br><br>言いながら、鱗滝さんは、そのかさついた大きな手を、俺の肩に乗せる。<br><br><br>鬼を、倒せていたとしても……?<br><br>異な事を言う。鬼狩りは、鬼を倒すのが使命だ。その使命に準じて死ぬなら、それは正しいことなのではないか。<br><br><br>「…………どうして」<br><br><br>「…………違うのだ。どれだけ立派に人を守ろうと、どれだけ無様に救えなかろうと、大切な者が死ぬのは等しく辛い。………悲しいのだ、錆兎」
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